人の道
なぜ。
一時の気の迷いや出来心で人の道を踏み外し、或いは、自分を信じている人を裏切り、愛する者を平然と欺き続ける事ができるのだろう。
人として如何に生きるべきなのか。
そういう視点が失われつつある。
人としてなんてどうでもいい。
欲望の赴くままに自分勝手生きていけばいいんだ。
自分さえよければ他人なんてどうなったっていい。
そんな考え方が蔓延しているように思える。
愛、愛なんていいながら。
愛する人を傷つけることなんて何とも思ってはいない。
恋愛だってゲームの一種のようにしか考えていない。
その証拠に浮気や不倫を美化する動きすらある。
欲望の赴くままに行動することを自由だと錯覚している。
自由恋愛というのは、ただ、ふしだらで放縦な生き方を意味するのではないのにである。
自由とは意志である。
意志のない恋愛は自由恋愛とは言わない。
不倫サイトなるものが流行っているそうだ。
一方で結婚もせず異性と交際もできずに独身でいる人も増えている。
人の道が廃れようとしている。
日本人の魂が失われようとしている。
人を思いやり、助け合おうという精神が忘れられようとしている。
律儀に決まり事を守ろうという意識が薄れてきている。
だから、教育の現場が荒むのである。
ばれなければどんな非道も許される。そんな時代になってしまうのかもしれない。
誠実とか、正直とか、純粋とか、真面目、真心は愚か者の代名詞となるのか。
金に支配された世界では人の心も金で埋められてしまう。
金で片付くなら良いではないか、金で買えるのだから、世の中何でも金、金、金。健康だって、愛だって、人の心さえも金で買えると思い始める。
しかし、この世の中の本質は金ではない。金儲けは、手段になり得ても目的にはなり得ないのである。人は、幸せになる為に金儲けをする。しかし、金が儲かったからといって幸せになれるとは限らないのである。
不倫は文化だなんて言う者がいるが、それは間違いである。
不倫に愛はない。
不倫は最初から愛する者や信じている者を裏切る行為、背信行為である。
不倫をするくらいなら、はじめからけじめをつけるべきなのである。
過ちは過ちである。
相手を傷つけず何の犠牲も払わせないで、自分だけ良い思いをしようという魂胆そのものが間違いなのである。
私は、社員を採用する時、何を目的にして弊社に入社するのかなと自問自答する。
金が目当てなのか、それとも生活の為なのかなと、遊ぶ金目当てという事もあろう。しかし、究極的には幸せになる為だと思う。
だから、会社というのは、働いている者全てを幸せにする事が目的なのであり、自分は社員やお客様、取引先を幸せにするために、会社を経営しているのだと思っている。
世の中には、幸せになりたくない、幸せになりたくないという生き方をしているようにしか思えない人もいる。でも、我が社の入社する社員は、社長のためにも、幸せになる事を諦めて欲しくない。幸せになる事にもっと貪欲になって欲しい。
不倫云々と言うけれど昔のように恋愛など許されず結婚相手を自分で選べない時代ならいざ知らず。自由に恋愛をして、結婚相手を選べるというのに、不倫をするとはどう言う了見なのか。
道ならぬ恋とか言わずに、禁じられた愛などと言わず、一時の衝動に負けただけだとなぜ言えぬのか。まだまだその方がもっともらしい。
不倫は美学にはならない。なぜなら、最初から汚いからである。
芸術を美術というのは間違いである。醜い物を醜く描くのも芸術だからである。戦争を美しく描く必要はない。戦争は悲惨で残虐なのである。悲惨で残虐な事は悲惨で残虐なのである。悲惨で残虐な事を美しく描く必要はない。悲惨で残虐な事は悲惨で残虐に描けばいいのである。
不倫は、身勝手で汚い。不倫は身勝手で汚く描けばいいのである。それが人生さと開き直るのならば、自分の人生を身勝手、薄汚いと開く直るべきである。
神は、不倫が良いとも、悪いとも言いやしない。神にとってどっちでもいい事なのである。良いとか悪いとかは、人間の認識、そして、認識した意識が生み出す事。だから、認識が美しいというのは人間の勝手だけれどその結果、自分も、自分が愛する者も自分を愛してくれる者も皆裏切り、傷つけている。その点を忘れたら不倫云々なんて言えない。
一時の気の迷いで全てを失うなんて愚かな事である。
人は、誘惑に弱く、脆い。しかし、それを正当化する事はできない。過ちは過ちとして受け止めないかぎり、誰からも、そして、誰も許せなくなる。
何が正しくて、何が間違っているのか。
何が正しくてではない。
何を信じるかである。
自分の何を信じて、自分の何処を信じるのか。
それにつきる。
父達の時代の映画に「ある世の出来事」と言う作品がある。
この時代の作品は、一つやるの下で紳士と淑女が同衾しても何事も起こらないという前提である。
我々の時代から一つ屋根の下で男と女が寝たら、何も起こらないはずがないという事を前提とするようになった。
どちらが事実か、真実かの問題ではなく、意志の問題であり、信頼に対する認識である。
今の時代は、男の矜恃も誇りも信じられないのである。
それが男である。男の理性や意志を信じられたのである。
男というと又女を差別しているという。
男は男である。
何が悪い。
女は女で何が悪い。
差別しているのは自分の意識である。
意識を正さずに、善の悪のと言っても始まらない。
何の根拠もなく差別だ云々だというのは、下品下劣である。
不倫は美学だとか、文化など、己のふしだらさを正当化するくらいなら、不倫は醜い、自分は醜いと認めた方が潔い。その方がずっと実がある。
己の醜さを正当化するのではなく、己の醜さと対峙しろ。然もなくば、醜さを克服し解放される事はない。
これくらいは良いだろう、許されるだろうと思ってやった事が返しきれない報いとなり、少しずつ積み上げた善行が多くの人の心を動かす。
その本にあるのは些細な事である。
最初はこの程度の事は許されるだろう。
こんな事をやったところで何になる。
その思いの差が大きく差となって自分の人生に重くのし掛かる。
瑣事を軽んじて悪行をなし、瑣事を大切にして善行となる。
それは自分の意識がなせる事である。
皆がやるから、俺もやる。
俺一人、正しきを守ったところで何になる。
そんな事は卑怯な言い分である。
人がどう思うとかまわない。
自分が正しいと思うからやるのだ。
誰も守らないからこそ自分が守る事に意義がある。
俺一人だからこそ貴重なのである。
誰も守らないとしてそれがなんだ。
自分が守らない理由にはならない。
男子たるもの一人行け。
神の意志は、瑣事にこそある。
一つ一つ、一歩一歩近づくのか遠ざかるのか、それを決めるのは、自分の意志である。
根源にあるのは、自分の意志である。
誰かが人の道を示さなければならない。
誰かが人の道を引き継いでいかなければならない。
仕方がないと諦めたらお仕舞いである。
