未来の日本の子供達に


未来の日本の子供達に


今は、解ってもらえないかもしれないけれど、日本が戦後の復興を成し遂げた時、君たちの先輩達がどんな考えをしていたか、書き残しておきたいと思います。

職場にいると、
時代が変わったのだと実感します。

昔はなんていう気はありません。
ただ、自分の感じた事を率直に言いたいと思います。

私は、現場で働いている人達に囲まれれて育ってきました。
当時は、住む家もなくて住み込みで働いている人が沢山いました。
結婚しても、六畳一間の裸電球、ミカン箱という生活からスタートです。
でも、皆、陽気でした。活力に満ちていました。

私は、謂わば現場育ちです。
私が育った環境は、家庭も職場も垣根がありませんでした。
大部屋育ちです。だから、僕は現場が好きですし、現場の人間が好きです。
だかに、僕らにプライバシーなんて少なくとも子供時代はなかったですし、
今で言う親子の交流もありませんでした。小遣いだって毎日渡される十円とお年玉以外はありませんでした。
父や母は休日も取らずに働いていました。
子供の頃は電気掃除機も電気冷蔵庫も、電気洗濯機もなく。テレビすらありませんでした。
でも父や母の働いている傍にいた事で、寂しさを感じる暇はありませんでした。
私だけがそうなのではなくて、友達皆が同じでしたから、不自由とか、貧富なんて関しませんでした。
皆で何もない原っぱで一緒くたになって、ビー玉、メンコと工夫しながら遊んでいました。そういう意味では本当に平等な社会でしたよ。
あの頃の会社は、トップの一声で何でも決まりましたし、結論が出れば、皆黙々と自分の責任を果たしていました。
二、三ヶ月もすれば、言われなくとも何とか物にしてきましたし、一人一人意地がありましたから。
今は、言ったってやらないし、上からの指示というのし最初から受け付けません。
かといって自分から何かをしようという事もない。
何でもヤリぱっなし、言いぱっなし、自分でけじめをつけようとか、始末を付けようとか、筋を通そうとか、
自分から何とかしようという事はないですから。
他人事、人事なんですね。自分で自分の家族を守ろうというのではないですよ。
意地もない。
だから、今は上の者が決めても反発するだけでしょうね。
大体、上下関係というのを認めませんから。
かといって何も決めないと優柔不断だと責めてきますからね。
やる気のある人は、今度は組織的に動かないんですよね。

当時は、部下を信じて黙って任せればよかったんですね。
安心してみていられました。
大丈夫なんて聞いたら、できなければ困るでしょ、無駄口をきかないでとかえってしかられた物です。
逆に、黙って任せてないと相手のプライドを傷つけてしまう。
よく親父に叱られましたよ。
相手はプロなんだから、ああだこうだ言わずに任せておけば良いんだと。
でも今は違います。プロといるような人間はいなくなりましたね。
現場の人間にできますかなんてきいたらどやされましたよ。
やらなければならないんでしょと。
やる気がない人間は、現場の人間は厳しかった。
同僚でも突き放していましたから。

今やらなければならないのは解っているんです。
でも、頭ごなしに言ったら部下がその気にならないと反発だが残ってしまう。
変な意味で僕が決めたと言うだけでも臍曲げますからね。
そのくせ意気地がない。何が何でもという事ないですから。
やりにくいんです。
当時の現場の人間は、どんなに反対してたとしても一旦結論が出たら、何とかしてくれると信じられましたけれど、
今は、表面賛成しているように見えてもやってみないと解らないですね。
しかも、途中でへこたれる可能性が大きいですから。
だから、悩み迷うんです。

自分達の力で何とかしようと思わないと・・。

折角、良い提案をしてもらったとしても、こちらの覚悟ができていなければ、結局、腰砕けなる。
やると決めたら、後は自分達の問題ですからね。いい結果がでなかった時に相手の性だなんて口が裂けても言えませんからね。
それは自分達の力が足りなかったからですよ。
それだけは相手の名誉に関わる問題です。
志の問題です。
それでもやるかという事ですね。だから、僕は、今、皆に問うているんです。
正直言って僕個人の問題なら、自分勝手にやれば良いのですが、会社の問題はそういうわけにはいかない。
ただ問題になるのは、これから会社を担っていく社員ですよね。
彼等の腹づもりをしっかり聞いて、それなりの覚悟を以て臨まなければならないと考えています。いくら僕がその気になってもこれからやっていく者達がその気にならなければ、かえって相手にご迷惑を掛けるだけです。

今は、良いけれど、本当に日本が行き詰まるような時代が来たら、自分達の力で何とかしなければね。
誰も助けてはくれないんだからさ。

昔のこと、他人の事をああだこうだと言っても始まらないのよ。
それよりも腹を括って前向きに何でも取り組むしかないんだよね。



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